現代社会において、日常的に目にするロゴマーク。
ロゴマークとは、企業や組織が一般的に認められるために使うグラフィック、エンブレム、シンボルのことです。
かじられたリンゴといえば、アップル
チェックマークのようなロゴといえば、ナイキ
鳥のシルエットといえば、ツイッター
といった風に、現代では会社を思い浮かべる際には名前より先にロゴで認識します。
そんな組織において重要な役割を担っているロゴマークですが、そもそもいつからあって、どんな歴史をたどってきたのでしょうか。
ん~気になります!!
ということで今回は、ロゴマークの歴史について解説したいと思います。
そして次の記事では、実際の企業のロゴマークの変化を画像付きで解説したいと思います。
■古代メソポタミア文明
ロゴの起源は、なんと古代メソポタミア文明まで遡り、紀元前3000年頃に現れたシュメール人が使い始めた、「円筒印章」と言われています。
え!そんなに!?と思いませんか?
びっくりですよね。
これは円筒を転がして、そこに描かれた模様を押印するものです。
所有者などを示す印などの、さまざまな情報を刻印した重要なアイテムとして使用されていたそうです。
■活版印刷の発明
ロゴの近代化は19世紀に始まります。
活版印刷の発明です。
活版印刷とは、凸の版に圧をかけて紙にインクを転写する、ハンコやスタンプのような原始的な印刷方法です。
この印刷技術のおかげで、広告産業を急成長させたのです。
そして、印刷物の見栄えに影響を与える、文字の書体、大きさ、配列といったタイポグラフィの表現に革命が起こります。
一般的な新聞などの文字から、ポスターなどに使われる装飾的なタイプフェイスへと変わっていきました。
いわゆる「フォント」もこれに含まれます。
芸術方面でも変化があり、それは、「アート」表現から商業的な「デザイン」表現になりました。
そして、ロゴという概念が欧米を中心に一般化していきます。
そういった流れで、デザイン系コンサルタントの企業や貿易の企業が増えて成長していったのです。
■ロゴデザインの始まり
現代のロゴとして世界で初めて商標登録されたのは1876年、イギリスのBass Breweryというビール醸造会社の三角形のロゴです。
これが現代のロゴマークの始まりと言われています。
僕はビールが苦手ですが、これを知るとBass Breweryのビール、少しだけ飲みたくなっちゃいますね。
これ以降、企業や製品、ブランドなどでさまざまなロゴマークが誕生し、文字が読めなくても存在や個性を認識させることができるロゴマークは、グローバル化が進む中で飛躍的に浸透しました。
■シンプルで分かりやすいロゴ
20世紀後半にはデザイナーたちは、ロゴはシンプルで分かりやすく、覚えやすいものが良いと気付き始めます。
各ブランドが簡潔さに目を向けるなか、人の視覚伝達についての考え方を変えたのは、IBMのロゴをデザインをしたポールランドです。
このロゴは皆さんも一度は目にしたことがあるのではないですか?
この8本バーのロゴは今日に至るまで、世界で最も知られた企業ロゴの一つとなっています。
ポールランドの数ある有名な言葉として、
「すべてのものは関係している。デザインは関係だ。そこからデザインを始めるのだ。形と中身との関係だ。」
という名言があります。
彼によると、中身とはアイデアのことであり、形はそのアイデアをどう処理するか、どう扱うかだといいます。
こういったポールランドの思想は現代のロゴデザインにも大きな影響を与えています。
■3Dアイコンの流行
デジタルデバイス普及などの時代の変化で、ダイナミックな3Dロゴが流行します。
電子機器のスクリーンに、陰や厚み、質感、グラデーション、反射などを加えた3Dロゴが広がりました。
このように、ユーザーに馴染みのない新しいものでも、既存のものに似せて表現することで理解してもらえやすいビジュアルとなります。
これをスキュアモーフィズムと言います。
僕が初めてiPhoneを手にしたのもこの時代なので、とても思い出深いですね。
■フラットデザインへ回帰
世界が新しいテクノロジーに慣れてくるにつれ、ロゴデザインのトレンドはフラットデザイン(2D)に戻ります。
なぜフラットデザインに戻ったの?と疑問に感じると思います。
理由としては、携帯電話の小さな画面の出現に伴い、立体感を演出する影や強いグラデーションはロゴが潰れて視認性が悪くなる、といった要因が上げられます。
デジタルプラットフォーム上での読みやすさを向上させるため、フラットデザインが広がったのです。
ですが、まだまだスキュアモーフィズムを取り入れたデザインも多かった時代です。
■IOS7の登場
全てが変わったのは2013年6月、IOS7の登場です。
スキュアモーフィズムを廃止した初めてのOSであり、より実用的なシンプルなデザインへの考え方の変化により、3Dタイプのロゴはあまり使われなくなり、さらにフラットデザインが広がりました。
現代では、BMW、フォルクスワーゲン、トヨタといったテクノロジー業界以外の会社もロゴをミニマリズムするためにフラット化しています。
ロゴマークには、長い歴史があり、特に17世紀から始まった産業革命の影響を受け大きく進化しました。
「アート」表現から商業的な「デザイン」表現という新しい概念と、印刷技術の向上とともに広告産業の中でどんどん広がっていきました。
近年ではスマートフォンの保有率は急激に伸びていて、「レスポンシブ・ロゴ」という考え方も出てきたくらいに、小さな画面サイズでも視認性の落ちないシンプルなロゴ、というのがますます重視されています。
ロゴを考える際に、「ただ流行っているから」という理由だけで方向性を決めるのは安易な考えです。
今も昔もデザインには理由があります。
トレンドになっている理由、バックグラウンドをしっかり理解しておくことで、その場、時代、使用用途に合った最善の提案ができると考えます。
以上、ロゴマークの歴史についてでした。
次回は、実際の企業のロゴマークの変化をご紹介するので、ご興味があれば是非読んでください!!